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『西部警察2003』名古屋ロケ事故のまとめ

 2003年8月12日、『西部警察2003』の撮影中に松山高之刑事役の池田努氏が運転する劇用車が運転操作を誤り、撮影現場を見学していた一般客のいるところへ突っ込み、5人が重軽傷を負う事故が発生した。これに伴い、撮影は中止となった。石原プロモーションでは、この事故を重く受けとめ、『西部警察2003』の制作中止、放映中止をテレビ朝日に申し出、テレビ朝日もこれに了承した。9月に放送予定の『西部警察スペシャル』の放送については白紙状態となっている。

 このページでは、今回の事故についての情報をまとめることにしました。極力幅広い情報を集めてまとめることにしていますが、至らぬ点や、個人的な意見が一部に見受けられるかもしれませんが、あらかじめご了承ください。

『西部警察2003』とは

 故・石原裕次郎氏十七回忌、テレビ朝日開局45周年、石原プロモーション設立40周年を記念して、『西部警察スペシャル』を2時間ドラマとして9月6日に放送することに伴い、10月からは連続ドラマの10回シリーズとして制作をしているもの。

 オリジナルの『西部警察』は、1979年から1984年までの5年間に渡り、テレビ朝日で日曜夜20時に放送され、高視聴率を誇るアクション刑事ドラマでああった。近年、人間味や現実的な刑事ドラマが多い中で、いくらなんでも現実ではありえないだろうといえる人並み外れたアクションを中心としたドラマである。1999年の故・石原裕次郎氏の十三回忌の際、そして今年の十七回忌の際にも再放送が行われた。

 旧シリーズを踏襲して、新シリーズを21世紀に蘇らせることとなった。旧シリーズでは渡哲也氏扮する大門刑事は最終回で殉職しているが、今回の新シリーズでも大門役で登場するなど、「続き物」ではないという認識が必要である。旧シリーズと同様、地方ロケも行うこととなっていた。西部警察署は警視庁管内の警察署であるが、凶悪事件などが地方都市で発生した場合に、その現地の警察から出動要請が来るという設定があり、旧シリーズでも時折、札幌、仙台、山形、静岡、名古屋、岡山、福岡などで地方ロケが行われた。

事故の経緯

 テレビや新聞で報道されている内容を総合してまとめると次の通りになる。

 事故が発生したのは、『西部警察2003』の第1話、名古屋での撮影での2日目の昼、9月12日昼過ぎ。自動車部品販売店「スーパーオートバックス」の駐車場内にて、無線で指令を聞いた二人の俳優がそれぞれ警察車輌役のスポーツカーに分乗して現場へ急行するという場面を撮影していた。

 ところが、後に続いた池田努氏が運転する車輌(TVRタスカン)は、発進後すぐに操縦不能に陥り、駐車中だった一般車輌2台に接触、その反動で見学席に突っ込んだ。その場にいた見学客5人が、足の骨を折るなどの重軽傷を負った。これに伴い、名古屋でのロケは中止となった。

 事故当日の夕方のニュースでは、この事件の報道が各局、各紙で行われた。事故の被害に遭った一般客が録画していたホームビデオの映像も公開され、事故の様子が生々しくお茶の間に伝わった。報道の過熱は続く一方で、翌13日には石原プロ社長の渡哲也氏が被害者の見舞いのため名古屋入りし、病院を周った。

 13日夜には、記者会見が行われ、事故について謝罪するとともに、『西部警察2003』の制作と放映の中止が発表された。

事故の原因

 今回の事故は複数の偶然や管理ミスなどが重なった結果になったと見られる。

運転操作に不慣れ?

 池田努氏が運転していたTVRタスカンは、英国の自動車メーカー、TVR社製のスポーツカーである。日本ではあまり知られていない車輌である。

 排気量約3600cc、FR駆動、5MT、エンジンは直6/DOHC/24バルブとしている。同車は決して一般人向けの車輌とはいえないようで、高出力のスポーツカーの運転に精通しているドライバー向けとみられる。事故後のインタビューなどで池田努氏は、「アクセルを踏み込み過ぎた」という発言をしている。テレビで報道されている映像を察するに、アクセルを強く踏みすぎて急発進した結果、後輪がスリップし、車体が左右に大きく触れている。バランスはすでに崩しており、ハンドル操作もまったく利かないというまさに暴れ馬状態。そのまま駐車中の一般車の、スバルインプレッサ、日産スカイラインGT-RR-34スカイラインクーペに衝突している。その反動で観客席に突っ込んだ。

 直前に池田氏は運転操作の練習をしていたという報道が一部ではなされているが、それがどのくらいなのかはわからない。同車の特性を熟知した上での運転操作が望まれる。また、精神的なプレッシャーもあったのではないかという見方もできる。先述した記念の年が重なり、同プロダクションが本腰で制作している力作ドラマであり、そして大勢の観客が見ているそばでの撮影。「かっこいいところを見せたかった」という池田氏の談話にもその可能性は考えられる。

※ 事故に遭ったスカイラインの形式について、連絡を鈴木様からメールで頂戴いたしました。('03/09/08)

日産車ではなくTVR社の車?

 旧シリーズでは、日産自動車の全面協力があったため、撮影に使われた車輌の大半は日産車だった。フェアレディZ、スカイライン、セドリック、ローレルなど、決してスタントには向いていないが、日本人には馴染み深い車輌ばかりである。

 4月9日付けのスポーツ新聞各紙に出ていた撮影用車輌についての情報を元に、新シリーズにはどんな車輌が登場するのかを調べてみた(What's New?に4月9日付けに掲載)。

 ところが、上記の通り、新シリーズではTVR社のスポーツカーをはじめ、メルセデスベンツ(ブラバス)、アルファロメオ、ロータスといった外国メーカーの車輌ばかりが登場し、日産車は一般警察車輌役などで脇役程度に登場するのみとされている。新シリーズの自動車提供のスポンサーは、自動車輸入販売店とされている(名称失念)並行輸入自動車ディーラーのオートトレーディングルフトジャパンであった。車輌のラインナップを見ると、旧シリーズに比べて、無理した背伸びが見受けられる感は否めない。

 これは日産自動車の経営状態や方針が、19年前と現在では大きく異なっているため、新シリーズでは完全なる協力会社とはなってくれなかったものと考えるのが妥当であろう。しかも、今年はフジテレビの大ヒット刑事ドラマである『踊る大捜査線 The Movie 2』が劇場公開されており、日産自動車は「踊る〜」のスポンサーとなっている。スポンサーを二股するわけにはいかなかったのだろう。

 「日産車だったらこんな事故は起きなかった」という声が一部で聞かれるが、この意見はあながちはずれていないのではないかと考えられる。

※ 自動車の提供元について、連絡を鈴木様からメールで頂戴いたしました。('03/09/08)

観客席の設置とその安全管理は?

 『西部警察2003』の撮影現場に観客を招き、見学してもらうという姿勢は石原プロモーション独特のもの。ファンとの交流を大切にしようという意向であり、この責任は同プロダクションの小林専務にあるとされる。事故当日も、10mほどしか離れていない場所に見学席が設けられていたといい、20人程度のスタッフ誘導や整理にあたっていたという。

 ただ、疑問に感じられるのはカースタントが行われる西部警察の撮影で近くでの見学が本当に大丈夫なのか、という点だ。当然、爆破や衝突などが行われる撮影では、関係者以外の立ち入り禁止、付近道路の通行止めなどがなされる。今回の事故が発生した事例では、「車に乗って事件現場に急行する」という、単純に言えば車輌を発進させてカメラの前を通り過ぎるだけという場面である。

 目の前を車輌が通り過ぎるだけとならば、爆発が伴うわけでもないので、さほど危険はなかったと見るのが、油断を招く結果となったのではないだろうか。運転操作を誤り、観客席に突っ込むという事故は予見できなかったのだろうか。危険意識が不足していたとも考えられる。

 観客席と撮影現場の間にはロープや柵など、区切るものは一切なかったという。車輌が突っ込んでくることを想定していれば、緩衝材などで作った耐久性のある柵を作る必要がある。「カーアクション、カースタントのない場面は安全」という過信があったとしか考えられない。

刑事責任

 事故を起こした池田努氏は業務上過失致傷で書類送検されることが濃厚である。このほかに、撮影現場を管理・監督していた関係者も、安全管理上における業務上過失致傷での書類送検が考えられる。(この辺の法律関連についてはあまりよく知らないので割愛)

事故後の対応

 事故発生後、救急車が呼ばれ負傷者は病院へ緊急搬送された。重傷者は数回の手術が必要とされており、回復までは時間がかかる見込みという。事故発生直後のスタッフの対応は不十分なものだったのではないかという報道が、事故直後には一部でなされていたが、その辺の真意はどうなっているのかは不明。

 被害者本人、その家族への謝罪で渡社長と池田努氏、石原プロ、テレビ朝日の関係者が周ったようである。このほか、駐車場内で接触してしまった一般車についてはどうなったのかは報道にはあがっていない。

報道過熱

 事故発生後、連日テレビやスポーツ紙では事故を伝えるニュースがひっきりなしに行われた。これは少々異常ではないかと思えるほどの報道過熱振りであり、芸能人スキャンダルの域を超え、一般のニュース番組にまで取り上げられるほどである。

 NHKと事故当事者となってしまったテレビ朝日はその報道は控え目であるが、日本テレビ、TBSテレビ、フジテレビは他社の不祥事ということもあってお祭り騒ぎのように盛り上がっての報道となっていたことは否めない。その傾向が顕著だったのは日本テレビとフジテレビだった。テレビ朝日を擁護するわけではないが、ただ、テレビ朝日も事故の経緯など詳しい説明をニュースのなかでやってほしかったといえる。

 なお、旧シリーズに出演していた俳優が携わっているニュース、情報番組もある。日本テレビの「ザ!情報ツウ」には平尾刑事役の峰竜太氏が、フジテレビの「スーパーニュース」には五代刑事役の石原良純氏が、それぞれキャスターを務めている。かつて出演していたドラマでの事故ということもあり、おそらく両氏も辛いものがあったと思われ、「ザ!情報ツウ」の中で峰氏は事故の件について「残念です」の一言を述べている。

記者会見、そして制作・放映中止の決断

 13日に、石原プロ渡社長、テレビ朝日早河編成局次長らが記者会見を行った。一般客を事故の巻き添えにしてしまい、これ以上の制作の続行と放映は道義的に筋が通らないとし、石原プロは『西部警察2003』の制作中止を決断した。これにテレビ朝日も同意した。大変重苦しい記者会見となり、渡社長の表情からも辛さが伝わってくるものであった。夜のニュースで記者会見の模様を見た西部警察ファンにとっては、辛い時間となってしまった。

 制作中止になってしまうのは致し方が無い。まずは、被害者の回復、事故後のケアが大切である。これについては、ファンとしても同意するとしても、唯一引っかかる場面が記者会見にはあった。それは、記者からの「謝罪に病院へ訪れた際にかけた言葉は何か?」という質問に際して、井渡社長が隣の早河編成局次長に「土下座した話はして良いですか?」と内緒話をしていたことである。渡哲也氏の声は小さいとボソボソ言っていて何を言っているのか聞き取りづらいのが正直なところであるが、この内緒話の声はマイクでしっかり拾われており、ニュースでしっかり伝えられている。

 質問には謝罪したというのみの答えが返ってきたわけだが、翌14日のスポーツ紙には「渡土下座」という見出しが踊り出ているのは当然だった。表向きには土下座して謝ったというのは伏せていても、記者会見の現場ではそれが筒抜けとなっており、ちょっといやらしい感がある印象だった。

撮影再開を望む声

 制作中止の報道の後、テレビ朝日には撮影再開を望む電話やメールが殺到しているという。被害者への謝罪、道義的責任で制作中止を決断したのは致し方が無いと考える一方で、多くのファンが待ち望んでいた西部警察の復活が見送りになり、撮影中のドラマが途中放棄されてしまった形である。かつての大門刑事の名言“自分で蒔いた種は自分で刈り取れ”の本来の意味は一体どっちになるのか、判断が大変難しいところで、ファンの中でも意見が分かれるところである。

 たとえ、問題作の映画は公開に至ることがあっても、西部警察2003はあくまでもテレビドラマである。結局のところはスポンサーの顔色を窺わなければなんともならないのが民放の弱みでもある。署名運動があったとしても、撮影再開に至ることは必ずしもできるわけではない。たとえ、スポンサーが首を縦に振ったとしても、事故の2度目は許されない。

 そして、撮影中の事故はなにも西部警察に限った話ではない。さんざんニュースで取り上げていた他局も、安全にドラマロケの撮影ができるという保証はどこにもない。人の振り見て我が振りなおせということにならないよう、気をつけてもらいたいものである。

関連情報のリンク

 このページを執筆するにあたって、参考にしたサイトの一覧。

『西部警察2003』オフィシャル関連

新聞社(全国紙)

新聞社(スポーツ紙)

自動車メーカー、ディーラー

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