しらこばと車輌工場

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日本国有鉄道185系900番台
(試案塗装・ダークブルー編成)

マイクロエース 品番:A4167 国鉄185系 試案塗装 ダークブルー編成 7両セット

 表題を長々と書いたが、「MicroAce製、国鉄185系試案塗装・ダークブルー編成」である。2003年、同社が国鉄時代にあったとされる185系の試案塗装のなかから、第1弾で4パターン、第2弾で6パターンを製品化した。このダークブルー編成とは、第2弾に含まれる編成である。どこの模型店でも売れ残り必須となってしまったアイテムであるが、この中から思わず気に入ってしまったダークブルー編成のみ購入してみた。

185系(実車)の概要

 185系は、1981年に登場した国鉄時代末期の特急用電車である。かつての急行「あまぎ」「伊豆」を特急に格上げし、L特急「踊り子」となったときに華々しくデビューしている。白い車体に上方から下方へ斜めに入った緑の3本の帯は、当時の国鉄では斬新なデザインであり、大変な話題であったという。185系は走行性能の面から見ると、実質のところ117系との姉妹車両にあたる。東海道線や伊東線での通勤電車としての使用も考慮されているため、転換クロスシート装備だったり、片開きながらも1000mm幅のドアを採用していたり、特急なのに窓が開いたりと、特急電車というよりは、急行電車に近い仕様となっている。また、当時急行運用にあった153系との併結運転が可能となっている。

 翌1982年6月に東北新幹線が、11月に上越新幹線が大宮まで開業するに伴い、上野から大宮までの新幹線連絡特急として「新幹線リレー号」が設定され、185系200番台が登場した。こちらは、白い車体に緑の帯という点は共通であるが、窓の下に横方向一本の帯が入っただけという、これといって珍しいものでもなかった。リレー号は東北・上越新幹線の上野延伸と同時に消滅、200番台は0番台と共に「踊り子」に運用されたり、東北、高崎、上越線系統の新特急「なすの」「草津」「谷川」「あかぎ」として運用されるようになった。

 そして時代は流れ、1990年に251系「スーパービュー踊り子」がデビュー。基本的には「踊り子」は185系と251系が共に担当することとなった。その後、東海道方面担当車両は湘南カラーに、東北方面担当車両は「Express 185」塗装に、スキーシーズンの臨時列車「シュプール」担当車両には「フルフル」塗装がそれぞれ変更されて現在に至る。あの斬新だった斜めストライプ塗装は現存していない。

 2003年現在の基本的な運用は、特急「踊り子」、「あかぎ」、「草津」、「水上」(旧称谷川)と、ホームライナー「ホームライナー鴻巣」、「おはようとちぎ」、「ホームタウンとちぎ」などとなっている。

185系試案塗装とは?

 国鉄時代、185系の塗装を選定するまでに数十もの試案塗装がデザインされ、その中から実際に採用されたのは、デビュー当時の緑3本の斜めストライプである。どうやら、 MicroAce はそのボツとなった試案塗装の中からいくつかのパターンを選出して、模型化したようだ。せっかく考えたいくつものデザインパターンがボツになったであろう、当時の国鉄担当者の苦労を模型で再現、という趣旨である。

 つまり、185系試案塗装シリーズとして製品化された模型群に実在した車両はなく、日の目を見ることなく闇に葬り去った架空の列車ということになっている。発売された編成は次の表を参照。

第一弾 朱編成 白地に旧「踊り子」と同じストライプだが、オレンジ色となっている。これといって特徴はない。
赤編成 白地に赤い「く」の字のラインが入っており、側面は両端に1本ずつ、中央に3本。正面にも縦に3本ほどラインが入っている。側面のラインはなんだかビデオの早送りとか巻き戻しみたいな模様に見える。
緑編成 白地に旧「踊り子」と同じ緑色のストライプだが、側面は両端に描かれている。また、正面にも縦に3本ほどラインが入っている。ストライプが増えるとこうもしつこい印象になってしまうものだろうか。
青編成 緑編成と同様だが、色は青である。
第一弾製品の詳細説明は MicroAce の Web を参照。
第二弾 国鉄特急カラー編成 157系の国鉄特急カラーをそのまま踏襲したものである。仮に185系がこのカラーで登場したら、単なる「157系の後継車」としてしか受け取られず、これといった話題にもならなかったのではないだろうか。しかし、国鉄時代に国鉄特急ではないカラーを採用した同車だけに、本シリーズではこのカラーが一番人気とみられる。
レインボーカラー編成 旧「踊り子」と同様のストライプであるが、編成を組む各車で塗装が異なるというもの。まさに虹をあらわしているようなカラフルな編成であるが、製品を見てみたところあまり華美な色合いではなく、思ったよりは落ち着いた装いとなっている。国鉄特急カラーに並び、これも人気カラーのようである。
湘南カラー編成 現行「踊り子」の湘南カラー塗装と色は同じだが、試案塗装ではそれが斜めになっている。車輌中央より後方にラインが入っており、インパクトがあるかもしれない。製品を見ての第一印象は「みかん畑みたいだな」だったのだが、現行の185系の湘南カラーは本当にみかん畑をイメージしたものらしい。
ダークブルー編成 塗りわけ自体は湘南カラー編成と同じだが、水色、青色、濃青色の3色を用いており、本シリーズの中では唯一のさわやか系。見ての通り海や空をイメージしているようである。詳細は後ほど。
イエローグリーン編成 ダークブルー編成が海ならこちらは山をイメージした塗装。2色の緑色の濃淡を使っている。側面は車体中央より前方に斜めのラインが、後方には斜めに塗りつぶしがなされている。特急電車というよりは、まったり走る郊外電車という印象が強い。
ミディアムブルー編成 新幹線100系に似た青い2本の帯が入っていて、これに細い斜めのラインをプラスしている。思わず、この塗装案が100系に生かされたのかもしれないと安易に想像してしまう。本シリーズの中ではシャープな印象が強く、「踊り子」というよりは「リレー号」として採用されるべきではないかと思える。都市間シャトル列車とか、新幹線連絡特急に似合いそうだ。
第二弾製品の詳細説明は MicroAce の Web を参照。

 セットはすべて7両セットとなっていて、編成は次の図の通り、185系の基本的な編成である。なお、車番は試作車扱いということなのか、全車が900番台になっているが、編成ごとに番号が異なっている。もちろん、この車番は実在しない。

クハ185-900 クハ185-900 モハ184-900 モハ184-900 モハ185-900 モハ185-900 サロ184-900 サロ184-900 モハ184-900 モハ184-900 モハ185-900 モハ185-900 クハ185-950 クハ185-950
クハ185-900 クハ185-900 モハ184-900 モハ184-900 モハ185-900 モハ185-900 サロ184-900 サロ184-900 モハ184-900 モハ184-900 モハ185-900 モハ185-900 クハ185-950 クハ185-950
クハ
185-900
(Tc)
モハ
184-900
(M)
モハ
185-900
(M)
サロ
184-900
(T)
動力車
モハ
184-900
(M)
モハ
185-900
(M)
クハ
185-950
(Tc)

ダークブルー編成

 それでは、今回意を決して購入したダークブルー編成について見ていく。Nゲージャーの間では、試案塗装のシリーズについて賛否両論あったようであるが、私はこの企画は面白いと思うので興味があるところである。ただ、10種類発売されたところで、実際に欲しいかもと思えたのはレインボーカラー編成と、ダークブルー編成だけであった。しかも、実際に購入に至ったのはダークブルー編成だけであった。

セット写真

先頭より

クハ185

 先頭から見てみた様子。ヘッドマーク部分はシールを貼り付けることとなっている。付属のシールの内容は後述とする。できれば、KATO製品のようにくるくる回転して表示を変更できる仕組みのほうが楽しめるような気がする。

 それにしても、国鉄特急マークは金色でよいのだろうかと首を傾げてしまうところである。

側面より

クハ185

 先頭車の側面を見て、デザインについて評価してみる。最も目立つであろう、斜めの太いラインは、車体の後ろ半分に描かれている。中央よりから水色、青色、濃青色の順番に色を配している。水色と青色のラインは、雨どいから窓下にかけて配しているが、濃青色のラインだけは車体裾に到達しており、かつ細い帯となって先頭部に延び、そのまま反対側まで周っている。

離合風景

離合

 編成の前半分と後半分を並べて離合シーンみたいなものを用意。目に付くのは、先頭部の配色だろうか。濃青色は正面裾に細いラインで入っていて、青色は正面窓の下に、水色は屋根にそれぞれ施されている。白を基調にしていることには変わらないわけだが、屋根の色が水色になっていることで、表情が大きく変わった感がある。

 なお、これらの写真はジオラマレールの直線レール2枚を使って撮影している。

塗装と印刷

セット写真セット写真

 塗装に大きな乱れなどはなく、大変綺麗な仕上がりであるといえる。しかし、窓のサッシの銀色塗装に若干の斑があるような印象である。なお、禁煙車、号車番号、車番、国鉄JNRマークは印刷処理されており、インレタの転写やシールの貼り付け作業が煩わしいと思っている人にはありがたい仕様である。ユーザーが貼り付けるシールは、ヘッドマークと側面方向幕だけである。

気になる点など

サロ185-900

付属シールの内容

ヘッドマーク 側面方向幕
急行
伊豆
急行 伊豆
東京行き
はまかいじ
HAMAKAIJI
特急 はまかいじ
鎌倉行き
踊り子
ODORIKO
特急 L踊り子
前橋行き
水上
MINAKAMI
新特急 L水上
越後中里行き
特急 特急
踊り子
(絵入り)
(前述のもので代用?)

 MicroAceらしいといえばそうなってしまう仕様がある。まず、動力車は編成中央に設定されているわけだが、よりによってサロである。そう、付随のグリーン車である。付随車に動力ユニットが仕込んであるとはびっくりであり、床下機器はどうなってるのよ?と思ったわけである。なんと MicroAce の旧動力ユニットで、動力機構は車内にすべて納められているため、床下は付随車ならではのスカスカである。その代償で車内は真っ暗である。個人的に室内灯を取り付ける予定は無いので差し支えはないが、真っ黒になっている窓には少々違和感が感じられることもある。ところで、グリーン車の窓サッシは金メッキ?

 そして付属の行き先シールやヘッドマークである。基本的にヘッドマークは文字だけで、絵入りは別で付属している品番A4150に付属している「踊り子」のみである。そして行き先だが、踊り子なのに前橋行きだったり、波動用の臨時特急にでも使えといわんばかりの「特急」といったように、謎が多く、使用方法に各自工夫が必要とみられる。個人的には、ホームライナーとかも収録されていると良かったかなと思う(ときもある)。

総評

 おそらく、185系は MicroAce の中では完成された車種のひとつであり、KATO製品、TOMIX製品と比較するとラインナップも豊富である。KATO製品のほうが全体的に良い仕上がりであると思うが、TOMIXはあまり185系に力を入れていない様子であるため、実質TOMIX製品と肩を並べても良いのではないかと思うところだ。客窓が若干大きいのではないかなと感じるが、それほど気にすることでもなさそう。

 一部に気泡が見られるものの、大きな塗装や印刷の乱れもなく、鮮やかに仕上げられた車体は大変綺麗である。窓サッシの銀色の斑がなければ、塗装の面では満足の行く製品であろう。ただ、動力ユニットがよりによって旧性能であり、しかもサロに設定されているというのは残念である。サロのみ内装が真っ暗であり、他の車輌は車内シートのカバーに白塗装まで施されているという手の込みようである。せっかくならば、E231系以降で採用している走行性能が良い新動力ユニットをモハに設定して欲しいところだ。

 動力ユニットが旧性能であることに付随して、金型そのものが旧製品のままであるということがわかる。車体をひっくり返してみると、床下には古い MICROACE ロゴが刻印されている。そのため、床板はTOMIX製ボディマウント式TNカプラーに非対応となっている。近年の MicroAce 製品は、このTNカプラーに対応した床板となっているだけに残念である。

 また、この売れ行きから察して増結セットの発売はないと予想しているが、増結編成があるとこれはこれで楽しめるかもしれない。ただし、その際は先頭部がボディマウント式TNカプラーに対応していることが前提である。

 写真を撮ってこの記事を書いているうちに、ダークブルー編成は伊豆急行にうまく溶け込んでしまいそうな気がしてきた。さて、ダークブルー編成が実用化されなかった理由を考えてみた。一言で言えば、旧「踊り子」号と比べて、塗装のメンテナンスや運用の都合などで効率が悪いからだろう。T車は左右対称になっているから良いものの、MM'ユニットは、東京側と下田側で塗り分けが正反対になってしまう。何らかの事情で編成の組み換えが行われるとしたら、ストライプの向きを合わせないと、見た目(俗に言う編成美)がおかしくなってしまう。そのようなことを考えれば、模様が線対称のダークブルー編成はボツになって当然なのかもしれない。旧「踊り子」号は斜めストライプでありながら点対称の模様であるため、編成の組み換えをしても車輌の向きを気にする必要がないという、実はとても効率の良い塗装なのかもしれない。国鉄末期の事情なども踏まえて、そんなことを考えたら、他の試案塗装が実現しなかった理由も見えてくることだろう。

余談

 MicroAceブランドではなく、有井製作所として「踊り子」といえば、1/32スケールプラモデルで「伊豆の踊り子号」というボンネットバスが発売されている模様。

 「踊り子」といえば、川端康成作の「伊豆の踊り子」や、それをドラマ化したモーニング娘。(当時)の後藤真希さん主演「伊豆の踊り子」が思い浮かぶ。元祖である小説よりも列車そのもののほうを先にイメージしてしまうのは、鉄道ファンをだけだろうか。そんな踊り子号であるが、推理小説では、西村京太郎作「L特急踊り子号殺人事件」斎藤栄作「伊豆『踊り子号』の殺人」といった作品があるようで、機会があれば読んでみるのも良いかもしれない。

 さらに「踊り子」といえば、村下孝蔵の「踊り子」もおすすめ。CDアルバム「林檎と檸檬 村下孝蔵ベストセレクション」DVD「純情」に収録されている。澄んだ歌声と切ない恋模様を描いた歌詞がとてもよい。

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