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実車について
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戦争中の資材不足の中、徹底的に製造コストを削減してなんとか作り上げたのが63系である。大量輸送を鑑みて、4扉ロングシートという設計がなされた。今では当たり前の通勤型電車の基礎はここで生まれたといっても過言ではない。
戦後の混乱期、京浜東北線桜木町駅で発生した火災事故(桜木町事件)での反省を踏まえ、63系に安全対策の改良を加えたものが73系である。ショートによる火災の原因となった屋根の絶縁、不燃素材の使用、貫通扉を引き戸に取り替え、非常用ドアコックを設置、その他いろいろな改造工事がなされた。
総勢1400両あまりにもなった73系は、改造年度や担当工場の違いで多種多様な形態が生まれた。そのため、1両たりとも同じ姿をしている車輌はないと言われている。新性能通勤電車(101系、103系)の登場に伴って地方ローカル線に転属したものや、事業用車輌に改造されたものがあるほか、戦後の配給割り当てで小田急電鉄、東武鉄道、名古屋鉄道などに払い下げられたものなど、さまざまな車輌が存在したことも特記される。
仙石線は旧型国電が配備された最北の地で、73系もその中に含まれている。塗装の変遷は気動車色、うぐいす色、うぐいす色+前面警戒色(試験塗装)、うぐいす色+前面警戒帯(黄色)、スカイブルー(アコモ改造車のみ)と、大きく分類しても5回ほど変更されている。塗装以外で外観上の特徴としては、乗務員室隣の客用窓にはタブレット保護網を設置、通風器をグローブ型から押し込み型に取り替え、客用扉の半自動化、アルミサッシ化、一部中間車に荷物室仕切り用シャッター取り付けなどが挙げられる。この後、順次103系に置き換えられていった。
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路線紹介
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仙石線は宮城県仙台市のあおば通駅・仙台駅から松島海岸駅や本塩釜駅を経て石巻市の石巻駅までを結ぶ路線である。宮城県内のJR線では唯一の直流電化区間となっている。もともと宮城電気鉄道として建設され、後に国鉄に買収された名残である。そのため、他のJR各線からは独立しており、独特の運営がなされている。一部区間ではルートの変更、踏切渋滞解消のための高架化や地下化、駅や電車区の移転などの改良が行われた。
もともと運転本数が多く、快速運転も行われているため、仙台への通勤・通学には便利な路線となっているようだ。さらに、沿線には絶景の観光地である松島があり、東北本線と並走していながら仙石線のほうが松島に近い側を通ることもあって観光路線としての一面もある。
特に興味深いのが仙台駅の所在地である。宮城電鉄時代の仙台駅は当時としては珍しい地下駅で建設された。後に移転して地上駅となり、そして現在はまた地下駅になった。地下化に合わせてあおば通駅まで延伸されている。位置関係としては、仙石線の仙台駅はJR各線の仙台駅東口側に、あおば通駅はJR各線の仙台駅西口側にあり、仙石線には実質的に仙台駅が2つあることになる。将来的には仙台市営地下鉄東西線に乗り入れる構想があるようだ。
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作成目標
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文献やネットで当時の仕様を調べ、できれば時代を揃えて作成したい。しかしながら、あまり厳密になりすぎると不明箇所が出てきて作成に行き詰まるので、ある程度は割り切ってタイプで作成することにする。よって、仕様の基本軸は陸前原ノ町電車区に所属する73系で、車体色をうぐいす色+黄色警戒帯とする。「こんな感じで存在していたかもしれない」といったニュアンスでまとめることにした。つまり、実在しない仕様になっても、時代が若干違う車両を連結することになっても気にしない、ということ。
材料はGREENMAX製品の「ゲタ電73系原型・全金混結6輛編成セット」を中心とし、過去に作成したキットの余りパーツや、別売りのパーツをそれぞれ補って作成する。エッチングパーツは使わずに、極力プラスチックのパーツにこだわる。
運転会での運用を視野に入れ、走行性能を重視する。トレーラー車はウエイトを増やして重心を下げる改良を行う。また、TOMIX製の動力ユニットを用いて他の模型との足並みを揃える。なお、TOMIX製の動力ユニットを使う都合上、妻面のカプラーはボディマウント式TNカプラーにする。
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材料一覧
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作成にあたり、下記の材料を使用した。なお、区名表記などのインレタは省略した。
- GREENMAX
- 品番201/ゲタ電73系原型・全金混結6輛編成セット×1セット
- 品番5006/台車:DT13×2両分
- 品番5005/台車:TR48×1両分
- 品番80-2/パンタグラフ:PS13×1セット(2基)
- 品番62-1/排障器×1袋
- 品番70-3/押込み型ベンチレーター×1袋(48個入り)
- 品番SP-12/鉄道カラースプレー・黄5号
- 品番SP-15/鉄道カラースプレー・黄緑6号
- 品番SPL-35またはSP-35/鉄道カラースプレー・ダークグレー
- 品番SPL-10またはSP-10/鉄道カラースプレー・黒
- 品番SPL-40またはSP-40/鉄道カラースプレー・クリアーコート(光沢)
- TOMIX
- KOTOBUKIYA
- BANDAI
- CSI Creos
- TAMIYA
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編成図
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仙石線なので4両編成である。73系の基本的な4両編成といえば、クモハ73+サハ78+モハ72+クハ79であるが趣向を変えてクハ79+モハ72+モハ72+クハ79という、両端をクハとする編成を選んだ。ただし、下記の編成図は実在しない車番も含まれているので、予めご了承いただきたい。
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各車詳細
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4両編成だが1両ずつ仕様が異なるので、詳しくはこの節でご紹介する。
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クハ79形・原形Hゴム更新車
石巻側の先頭となる制御車で、原形車だが前面窓は3枚ともHゴム更新とするため、余剰パーツとなっているクモハ73のお面を2枚からHゴム化されている窓部分を切り出して合成した。また、屋根の通風器は押し込み型に変更した。客用窓はアルミサッシに改造されたものの、1:2の割合になっている簡易的なものを表現している。タブレット保護網は、コトブキヤのメッシュプレートを使ってみたのだが、少々ごつくなってしまった。先頭部は増結しないのでダミーカプラーだが、妻面はTNカプラーを装備している。車番は適当にクハ79232とした。
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モハ72形・原形車
サッシ改造より先に耐寒工事が施され、3段窓でありながら押し込み型通風器を装備したモハ72223をイメージして作成した。しかし、実車のモハ72223はほどなくして踏切事故で廃車になったことをあとで知ったため、ナンバーはそれを避けてモハ72034とした。妻面はTNカプラーを装備している。また、TOMIX製の動力ユニット(DT13)を取り付けている。
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モハ72形・全金車
仙石線に実在していたか未確認の極めて怪しい仕様なので、実在しないモハ72965という番号にした。文献やネットに載っている写真には、それらしい中間車が見切れているのだが……。
クモハ73全金車の車体に101系の余剰パーツを切り継いで中間車化して作成した。そのため、パンタグラフ側の車端部の窓割りはおかしくなっているがご愛嬌。屋根は元から開いているグローブ型通風器を取り付けるための穴をパテで埋め、押し込み型通風器を取り付けた。妻面はTNカプラーを装備している。また、全金モハのパンタグラフ側の妻面の客用窓は埋められていたようなので、適当にプラ板を切り出して貼り付けてそれっぽくしてみた。
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クハ79形・全金車
仙台側の先頭となる制御車で、クハ79926をイメージして作成した。仙石線に配置された全金属車のクハはこれ1両だけだったと柳沢氏の文献には記されているのだが、ネットで調べてみると同じく全金のクハ79943が在籍していたようだ。
列車番号表示機と方向幕表示機は使われていないため白無地としている。方向板差込部分は、余剰パーツのクモハ73のお面から削りだして作成して接着した。屋根は最初からベンチレーターを取り付けるための穴が開いているのだが、これを全て埋めた上で押し込み型通風器を取り付けている。先頭部は増結を考慮していないのでダミーカプラーだが、妻面はTNカプラーを装備している。
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最後に
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作成途中にTOMIXから73系仙石線の発売予告のアナウンスが出たので一瞬焦った。しかし、それは原形車の気動車色であり、今回作成した編成とは仕様が全く異なるものだったので助かった。
ブックケースに収納
運転会ではポイント操作ミスでの脱線を除き、基本的には安定した走りだったので結果は良好である。仙石線の旧型国電としては末期の部類に入るため、ある程度の知名度があるようだ。この調子で、仙石線のレパートリーを増やしてみたいと考えた次第である。
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参考文献・参考サイト
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作成にあたり、下記の文献、サイトを参考資料とした。