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はじめに 〜 「限定品」に翻弄された日々
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気がつけば、CROSSPOINTが塗装済みキットで発売していた。予算の都合がついた2002年春頃、GMストア大山店へ行ったら既に売り切れていて、「秩父1000系はまだありますか?」と店員に聞いたら鼻で笑われた上に「再生産の予定はありません」と言われたことがあるというのは機密事項である。
その後の9月、所用で横浜アリーナでのライブを見に行く途中に、東急ハンズ渋谷店へ立ち寄ったらなぜか1セットだけ売っていたので喜んで購入したという経緯がある。それにも関わらず、組み立てずに1年放置をし、組み立て始めた頃にはCROSSPOINTは堂々と再生産を行っていたのであった。
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実車情報
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元は国鉄101系電車。1991年頃、秩父鉄道が大量に購入し1000形として運用に入った。3両編成で活躍中で、101系が私鉄に渡った唯一の例である。JR所属の101系が絶滅する今日この頃に、秩父鉄道に大量在籍しているのは、性能面やメンテナンスの観点から大変使いやすい車種であったからではないかと推測される。秩父鉄道に登場した時は、黄色地に茶帯、前面に「秩父鉄道」と書かれた姿であった。現在では塗装がさわやかなものに変更された上、埼玉県からの補助金を受け、両先頭車のみ冷房化されている。しかし、外観の印象が変わったとはいえ、扇風機には相変わらずJNRマークが入っていたりして、101系であることに変わりは無い。
撮影日:2005/06/04 大麻生〜広瀬野鳥の森間(広瀬川原駅) (クハ1201側) |
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路線紹介
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秩父鉄道は、埼玉県内に鉄道路線を持つ明治32年設立の民間鉄道会社(私鉄)である。羽生〜熊谷〜三峰口間の71.7キロの秩父本線のほか、武川〜熊谷貨物ターミナル間の貨物線7.6キロも保有している。駅数は全部で38駅である。中小私鉄でありながら、旅客輸送と貨物輸送を共に扱っている。旅客輸送は国鉄や都営地下鉄から払い下げ車によって行われている。かつては自社発注の電車が用いられていた。貨物輸送では石灰石やセメントなどを長編成の貨物列車で運行している。また、蒸気機関車「パレオエクスプレス」の運行はSLファン、鉄道ファンでなくても魅力ある列車となっている。埼玉県北部の景勝地「長瀞」「秩父」を沿線に控えており、観光事業にも積極的である。花見やハイキングなどの季節イベントを企画したり、荒川上流での長瀞ラインくだりや宝登山ロープウェイの運行にも携わるなど、多彩な顔を持つ鉄道会社である。他社からの乗り入れは現在では西武鉄道からの列車のみであるが、かつては東武鉄道東上線や国鉄からも臨時列車の乗り入れが行われていた。
■関連本をさがす:『秩父鉄道の100年―保存版』、『秩父鉄道新風土記』
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編成図
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クハ 1200 (Tc) |
デハ 1100 (M) |
デハ 1000 (Mc) |
← 羽生・熊谷 |
影森・三峰口 → |
多少の改造は受けているが、旧塗装の頃は101系そのもの姿を保持している。
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製作記事
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CROSSPOINT製、秩父鉄道1000系塗装済みキットをほぼ説明書どおりに組み立てている。各自で行わなければならないのは、床下機器、屋上機器の塗装やサッシへの色差しなどである。
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材料
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トータルセットになっているため、台車、パンタグラフ、動力ユニットは必要分封入されているが、仮に無動力として組み立てる場合は別途DT21台車を購入することになる。
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組み立て/加工
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説明書にある通りに組み立てる。ただし、塗装済みであるため、ボディのパーツに傷を付けることが無いよう気をつけるほか、接着剤が食み出ると修正が困難になる恐れがあるため、慎重に接着をしていく。
なお、デハ1000の床下は冷房化に伴ってSIVが追加されているため、付属のパーツを取り付ける。非冷房時代の設定で組み立てる場合はこの作業は必要ない。
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塗装
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グローブ形ベンチレーター、クーラーへの灰色やねずみ色などはお好みで選択して各自塗装する。床下機器は黒で塗装する。このほかに塗装というほどの大掛かりな作業は無い。
また、サッシなどへの色挿しを行う。筆者の場合は、ガンダムマーカーの銀や灰色などを使用している。ちなみに、実車は前面窓は周りが黒で塗装されているが、アルミサッシはそのまま銀色である。
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ステッカー
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列車種別(白地もしくはワンマン表示)、行き先方向幕、車番は付属ステッカーから適宜選んで貼り付ける。透明タイプのステッカーなので、余白部分はさほど気にならない。
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表面保護
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これまでの作業が終わったところで、表面保護としてクリアーを吹き付ける。
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その他
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最後に、窓ガラスパーツの塩ビ板の切り貼り、パンタグラフの設置、床板に台車をはめ込むなどの作業を行う。なお、カプラーはKATOカプラーの密連形に交換した。
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作品画像
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編成図とは逆向きの写真となっているのはご了承願いたい。
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デハ1000
三峰口側に連結されている制御電動車で元クモハ100である。新塗装になってさわやかになった上、冷房改造でクーラーとパンタグラフが増設され機関車みたいな屋上となった。床下中央付近にはSIVが取り付けられている。
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デハ1100
中間電動車で元モハ101である。101系の塗装変更しただけという印象であるが、見ての通り冷房改造工事で同車には冷房装置が取り付けられず、非冷房車のままになっている。もしかして弱冷房車のつもりなのだろうか。真夏の熊谷を甘く見てはいけない気もするが、冷房が苦手な人には歓迎されそうだ。
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クハ1200
羽生側に連結されている制御車で元クハ101である。こちらにも3基の冷房装置が搭載されたが、比較的101系のままである。
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余談:車輌にまつわるお薦めソング
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秩父鉄道は、テレビCMやプロモーションビデオ(PV)の撮影でたびたび登場する。ここでは、1000形(新塗装)がチラッと映るPVの楽曲をご紹介。
©aqua music products
▲GOING UNDER GROUND「サンキュー」 / VICL-35704
GOING UNDER GROUND(ゴーイングアンダーグラウンド)が2004年9月にリリースした「サンキュー」は、ふと思い出す懐かしい人や場所に「ありがとう」という気持ちを歌にしたもの。「ありがとう」「Thank you!」って、簡単なのに意外に言い忘れてしまいがちな大事な言葉。今改めて、感謝の気持ちを伝えたくなる、そんな一曲。サンキューと言いたくても言えなかった、大切な誰かはいませんか?
で、肝心のPVは、ヴォーカル兼ギターの松本素生(まつもと・そう)さんが秩父鉄道に乗って故郷を訪ねるという設定。駅からの道で、ふと幼少時代の思い出を振り返ると、現在の自分と幼少時代の自分があぜ道ですれ違う。モノクロの世界に懐かしさや切なさが滲み出してくる作品。秩父鉄道1000形はそのPVの冒頭シーンに登場する。駅へ入線してくる列車は5000形なのだが、そのあと降車してホームに降り立つシーンでは1000形が発車して過ぎ去る映像になっている。独特の塗装はモノクロでもわかりやすい。
公式プロフィールによるとGOING UNDER GROUNDのメンバーは埼玉県桶川市在住とのこと。県内の秩父鉄道でのロケもこれで納得がいく。しかし、気になるのはこれまでに発表したCDに収録されている楽曲に「夜行列車」(「Cello」に収録)や「センチメント・エキスプレス」、「流線形」(「ホーム」に収録)、「銀河行き」(「ハートビート」に収録)といった鉄道を連想してしまうタイトルが何曲かあることである。
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最後に
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編成図とは逆向きの写真となっているのはご了承願いたい。
▲編成全景
紆余曲折あったが、購入を除いて苦労する点は無かった。もう1本くらい作ってもいいかなと思うところである。
▲飾り付けしたジオラマレールで撮影